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研究概要(目的・方法など)

研究概要(目的・方法など)

研究の目的は何か?

本研究では、教学IRデータが学生の学びの改善を支援するために有効活用されることを目標に、学生向けIR情報ポータルサイトを開発、評価することを目的とします。具体的には、履修科目、成績、各種アンケート結果、学習管理システム上のログなどの教学IRデータを分析、学生の学びの状況を可視化して表示し、学生に助言を与え、学び改善のためのシミュレーションを可能にするシステム(Self-Tailored Educational Portal System;以下STEPS)を開発し、実際のデータを用いて評価します。

このようなシステムを開発するには、その前提として「学びの変容を促すデータとは何で、どのように提示すべきであるか」を明らかにしなければなりません。さらに、STEPSは、学生が自らの将来像に基づき生涯学習時代に適応した「学び手」になることを目的に開発されます。そのために、メタ認知的モニタリングだけでなく、メタ認知に基づく学習活動のコントロール(メタ認知的コントロール)を促進するシステムとしなければなりません。

なぜこのような研究をしているのか?

■ 大学における学びが高校までと違うからです

高校までの学びは、国が定めた教育指導要領や検定教科書に則って、明確な学習目標とそれに達するまでの時期が明示されており、もっぱら自己調整学習(Self-Regulated Learning; SRL)が求められるため、児童・生徒の自己調整力が高まることが重要です。 一方、社会における学び(生涯学習)は、なりたい自分像を描き、現状も認識したうえで「何をいつまでに学ぶべきであるか」を学習者自身が決定するSDLがベースでとなります。また、成人学習理論が明らかにしたように、成人学習者の学びは子供の学びとは異なる特徴を持っています。

中等教育までで求められる学びと社会で求められる学びを接続する役割を果たすのが、大学などの高等教育機関です。つまり、子供から大人への学びの転換期(学びのトランジション)に相当するのが大学生時代になります。学生は、在学中にSDLのスキルや態度も習得すべきなのです。

■ 大学で学生の学びに関するデータが蓄積されているからです

多くの大学は教学IR部門を整備しつつあり、学生自身および学生の学びに関するデータを蓄積しています。従来、教学IR部門が開発してきたシステムとして代表的なのは、ファクトブック(大学を代表的な指標を用いて説明するシステム)、アーリー・アラート(低成績の学生や留年・停学等を予測するシステム)、ベンチマーク(他大学の主要指標との比較を目的としたシステム)の3種類ですが、これらのシステムは、ほとんどの場合、大学執行部・理事会・学部・研究科などの意志決定に使われ、教学IRデータが学生自身の役に立つ形で提供され、自ら学びを改善するために用いられることはありませんでした。

■ Learning Analyticsなどの研究が進んできたからです

上記のようにIR担当部署が作られることによって、これまで学内でばらばらに管理されてきた教学IRデータが、一元的に管理可能になってきました。これと並んで、教学データを多様な方法で分析して可視化するLeaning Analyticsや教育ビッグデータから意味を読み取るデータマイニングなどが学問として発展し、分析方法に関する研究が進んでいます。

これらのような理由から、教学IRデータを活用した学習支援を実現するシステムを開発し、学生にどのような影響を与えるかを検証することを目指しているのです。

研究をどのように進めるのか?

■ 前提となったシステムの効果見直し

私たちはこれまでにも教学IRデータを活用するシステムを開発してきました。Decision Support with IR(DSIR)※と呼ばれるシステムで、自己主導学習レディネス尺度(Self-Directed Learning Readiness Scale; SDLRS)で測定された学生のレディネスと授業シラバスのデータなどをマッチングする機能を持っています。DSIRはSTEPSのモジュールとして組み込まれる可能性があるので、この研究では、まずこのDSIRに欠けている機能や、DSIRのインターフェースの問題点などを検討し、改善の方向性を検討しました。
※DSIRについては、「成果物」のページからご覧いただけます。

■ 不足しているデータの洗い出しと収集方法の検討

現在行われている調査方法では収集されていなかったり、学生支援に用いることを目的に集められていないため、使用困難な形で蓄積されたりするデータ、例えば、授業外学習時間データに関する調査と収取方法の検討をします。

■ システムの設計・開発

この段階では、システムに必要なデータの整理とその収集・入力方法を特定し、表示内容を選出します。さらに、学生が理解し、反応しやすい可視化方法を開発します。 これらの研究を経て、まずモックアップが制作され、ユーザビリティ等が評価されます。ここでは、特に学生のシステム使用負荷を下げるため、データ入力をどこまで自動化できるのかが、重要な観点です。例えば、成績や履修科目などIRデータは可能な限り自動入力とするほか、それ以外のデータも簡易に入力できるように工夫します。

■ システムの効果測定と評価

効果として期待できるのは、自らの学習やその結果に対する自己責任の受容や主体性、探求心、将来に対する前向きな姿勢といったSDLにおけるレディネスの高まりだけでなく、学習方略を適切に用いて自律的に学び続ける自己調整能力を身に付けていくことや、成人学習者として自己効力感を持って自らの状況に適合した学習目標を設定できたり、多様な学習リソースを活用したりするようになることです。学生に協力してもらってシステムの評価を行います。

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